アメリカ農業経済学大学院への出願体験記①〜はじめに〜

こんにちは、i_love_riceです。
僕は現在(執筆時)、京都大学経済学部の4年生で、2020年8月からミシガン州立大学、資源経済大学院の農業経済学(Agricultural Econonomics)の修士コースに進学予定です。

お世話になるとこの正式名称は、
Department of Agricultural, Food, and Resource Economics at College of Agriculture and Natural Resource
というみたいです(長い)。

アメリカ農業経済学大学院シリーズでは、

①農業経済学大学院を目指すまでの経緯
出願に必要な書類について
(+番外編:出願書類の詳細
出願準備と反省点

という流れで書いていこうと思います。

今回の内容は僕の個人的な話ばかりなので、how toとしての役立つ情報が必要な方は、②と③に進んでいただければと思います。また注意していただきたいのですが、アメリカの経済学系の大学院受験の場合、修士プログラムと博士プログラムとでは、その内容・難易度はずいぶん違います。私の体験記は、あくまでも修士プログラムへの出願記録を書き記したものです。

まず農業経済学の大学院留学って、「農学?経済学?どっちなの」と思われるかもしれないので、簡単に説明しますね。農業経済学分野への理解がある方は読み飛ばしてください。

農業経済学は経済学の中の一つの分野に過ぎないのですが、Agri Econというと大体の場合、農業経済学、環境経済学、開発経済学を含んでいます。「経済学はミクロ・マクロ・計量」ってよく言いますけど、これらの分野は基本的に「ミクロ実証研究」が中心なので、Agri Econのコースに行くと、ミクロ経済学と計量経済学をひたすら勉強するんですね。内容は経済学大学院に進学した場合のものとほぼ同じなのですが、マクロをあまりやらずに、かつ実証研究を見据えて勉強していくというイメージです。
ということで、基本的には「経済学」と考えてもらって結構なのですが、きっとゲーム理論とか産業組織論(IO)とかをアメリカの経済学大学院でやってらっしゃる方からしたら、「Agri Econは子どもの経済学だ」って思われてるんじゃないかなあとか思ったりしています。

気を取り直して、僕がアメリカの農業経済学大学院を目指すまでの経緯(やってきたこと)を簡単に紹介しますね。

フェーズ1:国際協力したい系の学生生活

いつの間にか「駅前で途上国のために募金を呼びかける学生はダサい」みたいな風潮になっちゃったんですが、僕はそんな風潮が始まる頃に大学に入学しました。幼少期を途上国で過ごしたこともあり、国際協力に興味がありました。

入学してからまず、アフリカにボランティアに行きました。そして帰ってきてからは、当時ピークを過ぎたくらいのクラウドファンディングで寄付を募ったりもしました。その後、国際協力機構(JICA)の在外インターンで南米に行ったりもしました。

ウガンダ、カンパラのタクシー乗り場。これに毎日乗っていました、懐かしい。
(写真:2016年8月頃に撮影)

そうこうしているうちに、「開発援助の枠からいったんでてみて、途上国を捉えよう」と思うようになったんですね(もちろん僕は援助を否定したいというわけではないのですが)。
そんな時にちょうど、開発経済学に興味を持ちました。そこから僕は、経済学の道に入っていきました。

ところで僕は、穀物の中では圧倒的にコメが好きなのですが、1960年代に新しいコメ品種IR7を開発・普及し、アジアの食糧危機の回避に貢献した国際稲研究所 (IRRI)という研究所に興味を持っていました(このいわゆる「緑の革命」は良い面ばかりでないのですが)。

「ここで研究ができたらなあ」という軽い気持ちで、この研究所の横にあるフィリピン大学ロスバニョス校へ大学の派遣留学プログラムを使って、2年生が終わった直後の2月から交換留学をすることにしました。

フェーズ2:国際研究所での経験(いつの間にか農業経済学へ)

もともと父親が農業専門家として途上国で頑張っていることもあり、「農業は何か嫌だなあ」と思っていたのですが、このフィリピン留学によって(良くも悪くも)農業に近付いてしまいました。

フィリピン留学に行くに際して、文部科学省のトビタテ !っていうよく宣伝やっている、あの奨学金を利用しました。申請にあたり「国際稲研究所で研究インターンする!」って書いてしまった手前、何としてでも研究インターンをしなきゃいけない状況になりました(せっかくの奨学金、没収になったら悲しい!)。

僕の少々の図々しさも幸いして、第一線で活躍する農業経済学者のもとで、研究インターンをさせてもらえることになりました。この方が恩師となる、V先生でした。

研究インターンではじめのうちにやったこととしては、
・RやStataなどの統計ソフトの勉強
・研究機関のレポート用に簡単な記述統計処理、少しのレポート作成
・研究のための初歩的なデータ分析
などでした。

僕なりに真面目に取り組んでいると、「君は今までのインターンの中でベストだ!」とか言ってくれるようになり(逆に今までどんなインターンとってたんだ、あなたは。)、なんと学術論文の執筆をさせてもらえることになったんです。

これって社会科学(特に経済学)の場合、学部生にはまずできないことなんですよね。本当にラッキーだったなと今でも思うのですが、それはもうめちゃくちゃがんばりました。

結局これまで、有給の研究インターンも含めて合計8か月ほど現地で研究を行い、3つの研究に関わらせてていただきました。論文として形になったのは今のところ2つで、どちらも国際ジャーナル出版に向けて査読中です(実は査読ってめちゃくちゃ時間かかります)。

目に見える成果としては、僕が第一著者で書いたインパクト評価の研究論文Agricultural and Applied Economics Association (AAEA) で学会発表されたことくらいです。

本当に貴重な経験をたくさんさせてもらったのは良かったものの、いつの間にか僕は農業経済の人になってきてしまいました。幸か不幸か、父親ともずいぶん話が合うようになってきました。

フェーズ3:いざ出願

突然ですが、僕のキャリアゴールは「実証経済学者として途上国の発展に寄与すること」なんですよね(このフレーズ、奨学金の書類とかでいつも使ってきました)。

そのために何がベストか考えた時、経済学の場合だと「アメリカで博士号を取る」というのが王道になっているようで、小心者の僕はそれに従うよりほかありません。

普通の経済学大学院の方もいいかなと思ったものの、開発関連の実証研究を行いたい僕としては、農業経済学大学院でもいいかなと思っていました。
またそれに追い討ちをかけるかのように、V先生が「〇〇大学のAgriEconには知り合いがいるから、いい推薦状を書いてあげれるよ」とかいうものですから、僕に選択肢は残されていませんでした。

農業経済学の学科がある大学院というのはそもそも少なくて、例えばIvy leagueの大学院とかだとほとんどありません(コーネル大学を除く)。また有名な先生が多くいらっしゃるのは、カリフォルニア大学系列(特にバークレイ)と州立大学系列(特にミシガン州立大学やアイオワ州立大学)ということがわかりました。

<参考>IDEAS (経済学研究のデータベース)による、最新(2020年8月)の研究機関ランキング
出所:https://ideas.repec.org/top/top.agecon.html

こうして僕は、アメリカの農業経済学大学院へ出願するに至りました。

以上が簡単な経緯です、少し冗長だったかもしれませんが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。次回以降は皆さんにとって最も有益であろう、出願書類出願準備について書いていこうと思います。

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